「うちのまちでもゆるキャラを作ろうという話が出たけれど、本当に効果があるのだろうか」。ゆるキャラのメリットとデメリットを調べて、庁内で説明する材料を探している担当者の方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、ゆるキャラは名前や特産品を覚えてもらえて住民の愛着づくりにも使える一方、着ぐるみやグッズの費用と職員の手間がかかり続けます。作る前に「何のために・何年・だれが動かすか」を決めておくことが、失敗を防ぐ近道です。
この記事では、全国の自治体へのアンケートの数字でメリットとデメリットを整理し、長く続くキャラクターの共通点と失敗しない進め方を紹介します。読み終えるころには、庁内で話し合う材料がそろっているはずです。
ゆるキャラとは?自治体の約8割がキャラクターを持つ

ゆるキャラは「ゆるいマスコットキャラクター」を略した言葉です。地域のPRや名産品の紹介に使う自治体や企業のキャラクターを指し、自治体のキャラクター(ご当地キャラクター)の多くがこの呼び名で親しまれてきました。
公益財団法人 東京市町村自治調査会が2014年に全国の市区町村へ行ったアンケート(1,084の自治体が回答・2015年3月の報告書)では、自治体や地元の団体が作ったご当地キャラクターがいる市区町村は約8割でした。この記事では、この調査を「自治体アンケート」と呼びます。キャラクターは珍しいものではなくなり、今は「作るかどうか」と同じくらい「どう使い続けるか」が大切です。
「マスコット」という言葉の意味や、ゆるキャラとマスコットキャラクターの違いは、マスコットとは何かを解説した記事で紹介しています。企業のキャラクターの例は、企業キャラクターの成功例の記事にまとめました。
自治体がゆるキャラを作る5つのメリット

自治体アンケートで、自治体がキャラクターを作った目的は「地域全体のイメージ・知名度等の向上」が77.4%と最も多く、「地域産品等のPRや産業の育成」60.0%、「地域住民の愛着・郷土心の醸成」59.3%が続きました(複数回答)。この目的と、自治体自身の評価をもとに、主なメリットを5つ紹介します。
- まちの名前と魅力を覚えてもらいやすい
- 不祥事で使えなくなる心配が小さい
- 特産品や観光のPRに何度でも使える
- 住民がまちに愛着を持つきっかけになる
- 子どもや住民への呼びかけが伝わりやすい
まちの名前と魅力を覚えてもらいやすい
特産品や名所、歴史を形にしたキャラクターは、姿を見ただけでまちの名前と魅力を思い出してもらうきっかけになります。人の写真と違って、色や形、性格まで自由に決められるのもキャラクターならではの利点です。
自治体アンケートの自己評価では、「他地域に対して地域のイメージ・知名度等の向上に貢献できた」に「そう思う」と答えた自治体が30.2%でした。ただし、全国に名前が広まるのは一部のキャラクターで、作っただけで知られるわけではありません。
人と違って不祥事で使えなくなる心配が小さい
タレントや有名人をPRに起用すると、その人の不祥事でポスターや動画を使えなくなることがあります。キャラクターは架空の存在なので、そうした心配が小さく、同じ姿を何年も使い続けられます。
ただし、心配がまったく無いわけではありません。デザインや発言が地域の受け止め方とずれると反発を受けることがあるので、その備えはデメリットの章で紹介します。
特産品や観光のPRに何度でも使える
一度キャラクターを決めれば、ポスターや観光パンフレット、イベント、グッズまで同じ顔でPRを続けられます。自治体アンケートでは、着ぐるみや衣装などを住民・事業者に貸し出している自治体が61.1%、関連グッズを作って売っている自治体が59.9%ありました。
地元の事業者がキャラクターを商品に使えるようにすると、PRの場が自治体の外にも広がります。自治体以外の利用を認めている自治体(74.9%)のうち、86.1%は使用料を取らずに許可する形にしていました。
住民がまちに愛着を持つきっかけになる
キャラクターは、外へのPRだけでなく、住民がまちを好きになるきっかけにもなります。自己評価で「地域住民の愛着・郷土愛を醸成できた」に「そう思う」と答えた自治体は28.5%で、知名度の向上(30.2%)とほぼ同じ割合でした。
住民を巻き込む方法としてよく使われるのが市民公募で、自治体アンケートでは名前を市民公募で決めた自治体が55.5%にのぼります。住民へのインターネット調査(1,500人)でも、行政がキャラクターを使うことに「賛成」「どちらかというと賛成」と答えた人は約7割でした。
子どもや住民への呼びかけが伝わりやすい
交通安全や防災、健康づくりなど、かたい内容の呼びかけも、キャラクターが伝えると子どもや住民に届きやすくなります。自己評価でいちばん高かったのは「地域住民への啓発に役立った」で、「そう思う」が41.3%でした。
幼稚園・保育園への訪問やイベントにキャラクターを出している自治体も56.0%ありました。啓発のイベントで配る品にキャラクターを入れる例は、交通安全グッズの記事でも紹介しています。
ゆるキャラのデメリットと失敗しやすい点

メリットがある一方で、キャラクターは作ったあとも手間とお金がかかり続けます。自治体アンケートで挙がった活動の課題は、「担当職員等、人員が不足している、職員の負担が大きい」が57.1%と最も多く、「十分な予算が確保できない」が25.4%で続きました。
- 着ぐるみやグッズの費用と人手がかかり続ける
- 作っただけでは外から人は来ない
- 地域の受け止め方とずれると反発を受ける
- 権利があいまいだと自由に使えなくなる
着ぐるみやグッズの費用と人手がかかり続ける
キャラクターは絵を描いて終わりではありません。着ぐるみを作れば移動や修理、クリーニングの費用がかかり、イベントには中に入る人と付き添いの職員も必要です。
自治体アンケートの報告書によると、着ぐるみの価格は国内製で50〜100万円、商標登録はおおむね50万円程度といわれます(2015年3月時点)。作り始めた年度の予算が100万円以上だった自治体は約3割でした。
自治体アンケートでは、キャラクターの運営に関わる職員などの人数は中央値で4.45人でした。担当の職員が少ないと、イベントやSNSの対応が一部の人に集中しやすくなります。
着ぐるみの種類と費用、自治体の発注例は、着ぐるみ制作の費用と流れの記事にまとめています。
作っただけでは外から人は来ない
自己評価で「地域の交流人口増加に貢献できた」に「そう思う」と答えた自治体は8.7%、「地域の定住人口増加に貢献できた」は2.4%にとどまりました。住民への啓発(41.3%)など地域の中への効果に比べ、外から人を呼ぶ効果を感じている自治体は少数です。
キャラクターの数も増えています。ご当地キャラクターなどの情報サイト「ゆるナビ」には、企業のものも含めて4,660のキャラクターが載っていました(2026年10月30日時点)。ほかと似た設定では埋もれやすいので、そのまちにしかない題材を選ぶことが大切です。
さらに、自治体アンケートでは「特に現時点では評価指標等は設定していない」自治体が48.4%と約半数でした。何をもって成功とするかを決めておかないと、続けるか見直すかを判断できず、「引き際/辞め時がわからない」(5.9%)という悩みにもつながります。
地域の受け止め方とずれると反発を受ける
キャラクターは地域の顔になるため、デザインや設定が住民の受け止め方とずれると、反対や抗議を受けることがあります。住民へのインターネット調査では、21.2%が行政への意見として「税金を投入してまで取り組むべきではない」を選んでいました。
報告書は、いわゆる炎上をある程度起こりうるものと考えて運用し、民間がグッズなどにキャラクターを使うときは政治・宗教・公序良俗に反する使い方を禁じるなど、最低限のルールを決めておくことを挙げています。案の段階で住民や関係者の意見を聞くことも、ずれを防ぐ方法の1つです。
権利の取り決めがあいまいだと自由に使えなくなる
外部のデザイナーや公募の作品をもとにする場合、著作権をだれが持つかを契約で決めておかないと、あとでグッズや着ぐるみに使いにくくなります。自治体アンケートの自由回答には、作成を業者に委託したところ版権を業者が持っていて自由に使えない、という声もありました。
自治体アンケートでは、著作権が自治体にあるのは77.9%で、商標登録をしているのは35.4%でした。契約で決めておきたいことは、このあとの進め方の④を参考にしてください。
ゆるキャラで成功した自治体の例と共通点

長く続いている自治体のキャラクターには、記念の行事などで生まれたあとも役割を広げ続けていることと、使い方のルールを決めて地元の企業や団体にも使ってもらっていることが共通しています。ここでは4つの例を、自治体などが公開している資料をもとに見ていきましょう。
- くまモン(熊本県)
- ひこにゃん(滋賀県彦根市)
- すだちくん(徳島県)
- せんとくん(奈良県)
くまモン(熊本県)
熊本県のPRキャラクター「くまモン」は、九州新幹線の全線開業の日である3月12日が誕生日で、「熊本県営業部長兼しあわせ部長」として県の魅力を伝えています。企業や団体が申請して県の許諾を受ければ、くまモンのイラストを商品やノベルティに使える仕組みです。
県の調査では、民間の企業・団体がくまモンを使った商品の2025年の売上高は約1,503億円で、8年続けて1,500億円以上でした(最終小売価格の推計)。調査を始めた2011年からの累計は約1兆7,725億円にのぼります。
一方で、県の利用の手引では、特定の商品や企業をおすすめする使い方や、イラストの変形・加工などに決まりを設けています。広く使ってもらう仕組みと、キャラクターのイメージを守るルールを両方そろえている点は、ほかの自治体にも参考になるでしょう。
ひこにゃん(滋賀県彦根市)
「ひこにゃん」は、2006年4月13日に「国宝・彦根城築城400年祭」のPRキャラクターとして生まれ、全国から集まった1,167点の応募から名前が決まりました。翌年の400年祭のPRで人気が広がり、祭りのあとも彦根市のキャラクターとして活動を続けています。
2008年には、全国のゆるキャラが彦根城下に集まる「ゆるキャラまつり in 彦根」(現在のご当地キャラ博)が初めて開かれました。2026年には誕生から20年を迎え、彦根市の広報誌が特集を組んでいます(2026年4月号)。
記念の行事のために作ったキャラクターでも、行事のあとの役割を決めておけば、まちの顔として長く使えることを示す例です。
すだちくん(徳島県)
徳島県の「すだちくん」は、東四国国体の徳島県マスコットとして生まれ、今は県産の農林水産物のブランドを広めることや、県のイメージアップのためのマスコットとして使われています。
県の使用取扱要綱では、県の承認を受ければ使用料は無料で使える一方、顔や形を大きく変える使い方は認めていません。スポーツ大会のマスコットを、特産品のPRという新しい役割に引き継いだ例といえます。
せんとくん(奈良県)
「せんとくん」は、2010年に奈良県を中心に開かれた平城遷都1300年祭の公式マスコットキャラクターです。生みの親は籔内佐斗司氏で、祭りのあとも奈良県のPRに登場しています。
2026年8月には、奈良県とライブイベントの主催者が協定を結び、せんとくんのコラボイラストを使ったグッズの売上の一部を県に寄附してもらう取り組みを発表しました(奈良県の知事定例記者会見資料)。誕生から時間がたっても、企業とのコラボで新しい話題とグッズを生んでいる例です。
失敗しないゆるキャラの進め方5ステップ

ゆるキャラで失敗しないためには、絵を描く前に「何のために・何年・だれが動かすか」を決めておくことが大切です。作る前に決めておきたいことを、5つのステップにまとめました。
| ステップ | 決めること | 防げる失敗 |
|---|---|---|
| ①目的と物差し | 目的・見せたい相手・成果の測り方 | 続けるか見直すか決められない |
| ②期間と体制 | 使う年数・担当の人数・毎年の予算 | 職員の負担が大きくなる |
| ③デザインの決め方 | 公募・依頼・職員のどれで描くか | 応募作をそのまま使えない |
| ④権利とルール | 著作権・商標・使い方の決まり | グッズや着ぐるみに使えない |
| ⑤使い道と数 | どこで使うか・グッズの品と数 | 作りすぎや数の不足 |
①目的と評価の物差しを決める
まず、キャラクターで何を変えたいのかを決めます。「特産品の売上を伸ばしたい」「子どもに交通安全を伝えたい」など目的がはっきりすれば、モチーフや見せたい相手も決めやすくなります。
あわせて、成果を測る物差しも決めておきましょう。自治体アンケートで使われていた物差しには、イベントへの参加数(33.8%)、着ぐるみの貸し出し数(27.0%)、ライセンスの許諾数(14.9%)、関連グッズの販売額(11.8%)などがありました。
②何年使うかと運用の体制を決める
キャラクターは何年も使い続けてこそ効果が出ます。担当する部署と人数、SNSを更新する人、イベントの出演に付き添う人、毎年の予算を、作る前に決めておきましょう。
着ぐるみを作るなら、中に入る人の休憩や付き添いの決まりも必要です。担当者が異動しても続くよう、使い方や連絡先を1つの資料にまとめておくと引き継ぎがしやすくなります。
③デザインの決め方を選ぶ
デザインの決め方には、市民公募、デザイナーや制作会社への依頼、職員が描く方法があります。自治体アンケートでは、デザインの作成者は市民公募が39.5%と最も多く、地域にゆかりがない企業や専門家が14.6%、地域にゆかりがある企業や専門家が10.3%、庁内の職員が8.0%でした。
公募は住民を巻き込みやすい一方で、応募作をそのまま使えるとは限らず、清書や設定づくりを別に頼むこともあります。描き方の手順やグッズにしやすいデザインのコツは、ゆるキャラ(マスコットキャラクター)の作り方の記事を参考にしてください。
④権利と使い方のルールを決める
デザインを外部に頼むときは、著作権を自治体が譲り受けるのか、使う許可をもらうのかを契約で決めます。ぬいぐるみや着ぐるみなど立体にするなら、作り変える権利(著作権法の第27条・第28条の権利)まで含めて譲り受け、作者には著作者人格権を行使しないことを約束してもらいましょう。
名前や絵を長く使うなら、商標登録も考えておきたいところです。地元の事業者に使ってもらうときの申請の方法と、してはいけない使い方を決めておくと、くまモンやすだちくんのように広く使ってもらいやすくなります。
⑤使い道とグッズの数を決める
最後に決めるのは、キャラクターをどこで使うかと、グッズを作るなら何をいくつ作るかです。イベントで配る、観光の土産として売る、ふるさと納税の返礼品にするなど、使い道によって向く品と必要な数が変わります。
ぬいぐるみやマスコットは、作る数が多いほど1個あたりの値段が下がりやすくなります。売るなら売り値から逆算し、配るなら配る相手の人数から数を決めましょう。
ゆるキャラをぬいぐるみにして配ったり売ったりするときの費用と流れは、ゆるキャラのぬいぐるみの作り方と費用でくわしく紹介しています。絵を立体に起こす手順は、キャラクターのぬいぐるみの作り方が参考になります。
何個から作れて1個いくらかはぬいぐるみOEMの最低ロットと単価、依頼から納品までの流れはオリジナルぬいぐるみ制作の流れと費用の記事にまとめました。
ゆるキャラのデザインやグッズをRONECTに相談する

株式会社RONECTは、オリジナルのぬいぐるみやマスコットキーホルダーなどのグッズを作るOEM(相手先のブランドで作る受託生産)の会社です。商品やロゴに加えてキャラクターのデザインも作成しているので、キャラクターづくりの段階から相談できます。参考のデザイン料金は、デザイン作成のページで確かめてください。
キャラクターが決まったら、ぬいぐるみやキーホルダーにしたときの完成イメージを、AIを使って無料で作ります。庁内や関係者に見せて方向性を決める材料になる一方、画像はあくまで完成のイメージで、実際の製品とは形や色が違う場合もある点はご了承ください。
量産は中国の提携工場で行い、中国語に対応できる日本人の担当者が工場と直接やり取りします。サンプルの制作から量産、検品、輸入、国内の指定先への納品までまとめて受け持ち、期間の目安はサンプル約2週間、量産約30〜40日、全体で約2〜3か月です。
ぬいぐるみは100個から承っています。年度内に納品したいときは、期間の目安から逆算して早めにご相談ください。
まとめ

ゆるキャラは、まちの名前や特産品を覚えてもらい、住民の愛着づくりや啓発にも使える一方で、着ぐるみやグッズの費用と職員の手間がかかり続けます。長く続いている自治体は、行事のあとも役割を広げ、使い方のルールを決めて地元の企業や団体にも使ってもらっています。
まずは、キャラクターで何を変えたいのかと、何年・だれが動かすのかを、1枚の紙に書き出すところから始めてみてくださいね。
株式会社RONECTでは、キャラクターのデザインのご相談と、ぬいぐるみやマスコットの小ロットOEMを100個から承っています。キャラクターの絵と作りたい数、使い道を添えて、お気軽にご相談ください。

