介護にぬいぐるみを使うときの選び方と注意|施設で用意する方法も
「介護の場でぬいぐるみを渡すと落ち着くと聞いたけれど、本当に効果があるのだろうか」。大人を子ども扱いすることにならないか、本人が嫌がったらどうしようと、ためらう方もいるのではないでしょうか。施設でそろえるなら、衛生面や取り合いも気になります。
そこで本記事では、介護でぬいぐるみや人形を使うケアについて研究で分かっていることから、本人に合う選び方、子ども扱いにしない渡し方までを順に紹介します。試してみる価値があるかを、自分で判断できるようになるはずです。
あわせて、介護施設でぬいぐるみを用意して続ける方法と、施設オリジナルのぬいぐるみを作るという選択も同じ流れで解説します。
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介護でぬいぐるみや人形を使うケアの考え方
介護でぬいぐるみや人形を使うのは、薬を使わずに本人の安心や関わりを引き出す工夫の一つです。落ち着いた・会話が増えたという研究報告はありますが、物忘れが治るわけではなく、合う人と合わない人がいる点には注意が必要です。
薬より先に試す「薬以外の関わり」の一つ
認知症の人には、落ち着かない・怒りっぽい・歩き回るといった行動や気持ちの変化(BPSD)が出ることがあります。厚生労働省の研究班が作った、かかりつけ医・認知症サポート医向けのガイドライン(2025年の第3版)は、まず薬以外の関わりを家族や介護スタッフと検討して行い、それでも改善しないときにだけ薬を考えるという順番を示しています。
人形やぬいぐるみを抱いたり世話をしたりしてもらう「ドールセラピー(人形療法)」は、この薬以外の関わりの一つとして研究されてきました。ただし、国の指針がドールセラピーを名指しで勧めているわけではありません。
落ち着いた・会話が増えたという研究がある
介護施設での研究12本をまとめた2024年のレビューでは、興奮や攻撃、歩き回りが減った、会話や意思疎通が増えた、介護する人の負担感が減った、といった報告が主なテーマでした。オーストラリアの施設28か所・415人の研究(2017年)では、ロボットの機能を止めた見た目が同じぬいぐるみでも、いつものケアだけの場合より無表情が減っています。
研究で報告されていることを整理すると、次のとおりです。
| 見た点 | 研究で報告されていること |
|---|---|
| 落ち着かない様子 | 興奮や歩き回りが減った報告がある |
| 表情や会話 | 表情や会話が増えた報告がある |
| 物忘れなど | 良くなる根拠は無い |
| 薬の量 | 減らせたとは言えない |
研究の多くは写実的な赤ちゃん人形を使ったもので、動物のぬいぐるみを直接調べた研究は多くありません。ぬいぐるみに使うときは、同じ考え方を参考にする、という受け止め方が適切です。
物忘れが治るわけではなく合う人と合わない人がいる
2022年の系統的レビュー(7研究・295人)は、困った行動が減り会話が増えたとまとめつつも、研究の多くが小規模で方法にも弱点があるため、より大きく厳密な研究で確かめる必要があるとしています。新しいメタ分析(2024年・2026年)でも、物忘れなど認知機能が良くなる差は見られませんでした。
薬の量についても、イタリア(2021年)と中国(2026年)の比較試験で差は出ておらず、減らせるとは言えません。
合う・合わないの差も大きく、日本のグループホームで27人に赤ちゃん人形を手渡した学会発表の報告(2009年)では、反応が良かったのは5人、反応がなかったのは9人でした。病気を治すものではなく、その人に合えば安心につながる道具、と考えておくのがよいでしょう。
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本人に合う介護用のぬいぐるみの選び方
介護用のぬいぐるみは、その人の人生に合う形を選び、なでたくなる手ざわりで、取れる部品がなく洗える作りにするのが基本です。どれも、本人が安心して長く手元に置けるかどうかを考えて決めます。
その人の人生に合わせて人形か動物かを選ぶ
子育ての思い出が深い人には赤ちゃん人形が、犬や猫を飼っていた人には動物のぬいぐるみがなじむかもしれません。英国の施設の研究(2006年)では、入居者33人のうち人形を選んだのは13人、テディベアは1人で、半数を超える19人はどちらも手に取りませんでした。誰もが受け入れるわけではないので、本人の反応を見て決めましょう。
イタリアの研究(2021年)では、子どもを亡くすなどつらい経験のある人を対象から外していました。渡す前に、家族から子育てや飼っていた動物の話を聞いておくと、選び間違いを減らせます。選ぶときの目安をまとめると、次のとおりです。
| 選ぶ点 | 目安 |
|---|---|
| 形 | 子育てや飼っていた動物に合わせる |
| 手ざわり | なでたくなるやわらかい生地 |
| 大きさ | ひざに乗せて抱えられる程度 |
| 目や鼻 | 刺しゅうで取れる部品がない |
| 手入れ | 丸洗いできて乾きやすい |
なでたくなる手ざわりと抱えやすい大きさ
手でなでたり抱いたりすることが中心になるので、手ざわりのやわらかさは大切です。茨城県土浦市の本人・家族ミーティング(2025年)でも、認知症の人の落ち着かない手を温かく保つニット製品「認知症マフ」が、触覚や視覚を使うケアの道具として取り上げられていました。
大きさは、ひざに乗せて抱えられ、片手でも持てるくらいが扱いやすいでしょう。大きすぎると重く、小さすぎると口に入れたりなくしたりしやすくなるので、本人の体の大きさや力に合わせて選んでください。
取れる部品がなく洗える作りにする
消費者庁は、認知症の人は味やにおいを感じにくく、誤って口に入れても気づかない場合があるとして、誤飲すると危ない物は手の届かない所に置くよう呼びかけています。ぬいぐるみなら、ボタンの目やビーズ、小さな飾りを避け、目や鼻を刺しゅうにしておくと安心です。
介護の場では汚れることも多いので、丸洗いできて乾きやすい素材を選ぶことも欠かせません。中綿がポリエステルで、洗濯表示に洗えるマークがあるものを選ぶとよいでしょう。
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子ども扱いにしない渡し方と注意点
ぬいぐるみは「本物の赤ちゃん」とは言わず、本人が手に取りたければ取れるように置き、嫌がったらすぐに下げるのが基本です。取り合いや思い込みには、一人一つにして備えます。
本物の赤ちゃんとは言わず本人が選べるように置く
大人を子ども扱いしてしまう、本物の赤ちゃんだと思わせるのはだますことにならないか、という心配は研究者の間でも議論されてきました。中国の施設6か所の研究(2026年)では、職員は本人や家族に本物の赤ちゃんだと受け入れさせるような言い方を避け、家族には安心のための道具として説明していました。
認知症基本法も、認知症の人が尊厳を保ち、本人の意向が尊重されることを基本に置いています。こちらから持たせるのではなく、そばに置いて、本人が自分で手に取るのを待つ渡し方が望ましいでしょう。
嫌がったらすぐに下げて無理強いしない
押しのける、顔をそむけるといった反応は「いらない」という合図です。厚生労働省の意思決定支援ガイドラインは、認知症の人の身振り手振りや表情の変化も意思表示として読み取る努力を求めています。
先の中国の研究の聞き取りでは、人形を押しのけた人に職員が2回声をかけ直したら余計に興奮した例が挙がり、「もっとはっきり止めるべきだった」という声がありました。嫌がったら下げて安心させ、落ち着いているときに本人が望めば、また出すくらいの距離感がちょうどよいでしょう。
取り合いや思い込みには一人一つで備える
人形を使った研究のレビュー(2016年)は、人形の持ち主をめぐって混乱が起きることを課題に挙げています。2024年のレビューでも、落ちそうな置き方をされた人形を見た入居者が本物の赤ちゃんのように慌てて抱き上げ、動揺した例が紹介されています。
取り合いを防ぐには、一人一つにして名前を付け、置き場所を決めておくのが近道です。人形の世話を優先して自分の食事や睡眠がおろそかになるおそれを職員が指摘した研究もあるので、生活のリズムが乱れていないかも見守りましょう。
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介護施設でぬいぐるみを用意して続ける方法
介護施設でぬいぐるみを使うなら、一人一つに名前を付けて共用せず、洗い方と予備を決め、担当者が反応を記録する仕組みを先に作っておきます。続けるための決まりがあると、職員が替わっても同じ対応ができるはずです。
一人一つに名前を付けて共用しない
厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」は、接触による感染を防ぐため、使い捨てか利用者ごとの物品を使うことを挙げています。ぬいぐるみについての直接の記載はありませんが、同じ考え方で、一人一つにして共用しないのが安心です。
タグや足の裏に名前を入れておけば、取り違えや取り合いも防げます。特別養護老人ホームは1施設あたり平均66.5人が暮らしており(厚生労働省、2024年9月末時点)、施設でそろえるなら、人数分に予備を加えた数を目安にしましょう。
洗い方と予備を決めて清潔に保つ
同じ手引きは、リネンや衣類を80℃で10分間の熱水洗濯で処理し、洗ったあと乾燥させる方法を示しています。ぬいぐるみも、熱や乾燥に耐える素材で作られていれば、同じ考え方で洗えるものを選んでおくと扱いやすいでしょう。
洗っている間や乾くまでの間に手元からなくなると、不安になる人もいます。同じぬいぐるみを予備で用意しておけば、すぐに替えられて安心です。
担当者を決めて反応を記録する
先の中国の研究では、担当者を決めないと掃除や保管、記録がおろそかになるという職員の声がありました。誰が洗い、どこにしまい、どう記録するかを決めておくことが、続けるための土台です。
記録では、手に取ったか、表情や会話に変化があったか、嫌がる様子はなかったかを残しておきます。合わない人には無理に続けず、合う人の時間を大切にする、という判断にも役立つでしょう。
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施設オリジナルのぬいぐるみを作るという選択
施設や法人のキャラクターがあるなら、オリジナルのぬいぐるみにする方法もあります。入居者が触れられる形になるだけでなく、施設の取り組みを伝える目印にもでき、ロボットより手軽に数をそろえられるのも利点です。
施設のキャラクターを触れられる形にする
介護の分野でも、オリジナルのキャラクターを作る自治体や法人があります。京都府京田辺市は、認知症の取り組みを広めるために市の木と花をもとにしたキャラクターを作り、講座の教材やチラシで使っています。
こうしたキャラクターをぬいぐるみにすれば、入居者が手に取って触れられる形になるのが魅力です。施設になじみのある姿なら、職員との会話のきっかけにもなるでしょう。医療の場での例は、病院に置きたいオリジナルのぬいぐるみの記事で紹介しています。
名前入りのぬいぐるみを取り組みの目印に
福島県いわき市は、認知症サポーターの養成に取り組む企業や団体に、認知症サポーターキャラバンのマスコット「ロバ隊長」のぬいぐるみを、団体名を入れて交付しています。施設の出入口など利用者の目に留まる場所に置いてもらい、取り組みを伝える目印にしているのです。
施設のぬいぐるみを受付に置いたり、行事の記念品として家族に渡したりすれば、入居者だけでなく家族や地域の人にも施設の雰囲気が伝わります。
ロボットより手軽に数をそろえられる
動物の形をしたコミュニケーションロボットもあり、アザラシ型のロボット「パロ」は製造元のサイトで1年保証のもので税込423,500円です。都道府県の介護テクノロジーの導入補助の対象になる場合もありますが、1体ずつの価格は大きくなります。
先のオーストラリアの研究では、ロボットがロボットの機能を止めたぬいぐるみより勝ったのは、話しかけや視線といった関わりの面だけでした。ぬいぐるみは電池も要らず丸洗いもでき、施設の人数分をそろえやすい選択肢です。
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RONECTで施設のぬいぐるみを作る場合
株式会社RONECTは、オリジナルぬいぐるみやマスコットキーホルダーなどを手がけるOEMの制作会社で、ぬいぐるみは100個から注文できます。法人内の複数の施設の分や、家族に渡す記念品の分を合わせれば、数をまとめやすくなるでしょう。
完成イメージをAIで無料で作れる
RONECTでは、AIを使った完成イメージ画像の作成を無料で行っています。施設のキャラクターの絵やロゴを伝えれば、サンプルを作る前にぬいぐるみになった姿を確かめられます。
職員会議や法人の会議で画像を見せられるので、話し合いも進めやすいですよね。なお、AIの画像はあくまで完成イメージのため、実際の製品とは形や色が異なる場合があります。
手ざわりや洗いやすさまで相談できる
サイズや生地、刺繍、綿の量、付属品、パッケージなどの細かな仕様も、予算とのバランスを見ながら提案してもらえるので安心です。RONECTの商品ページでも、清潔に保てる洗いやすい素材選びや、足の裏やタグにメッセージを刺繍するアイデアを紹介しています。
目や鼻を刺繍にする、名前を入れるといった希望も、まとめて相談してみてください。料金の目安や制作事例は、オリジナルぬいぐるみ制作のページで紹介しています。
日本人の担当者が工場とやり取りする
RONECTでは、中国語に対応できる日本人の担当者が、中国の提携工場と直接やり取りする体制です。中間の業者を通さないので余分な費用を抑えられ、細かな修正の希望も中国語で工場に伝えられます。
制作期間の目安は、サンプル約2週間、量産約30〜40日で、全体では約2〜3か月です。これはサービス資料にもとづく目安で、仕様や修正の回数、数量、輸送の状況で前後するので、敬老の日などの行事に合わせたいなら早めに相談してください。
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まとめ
介護でぬいぐるみや人形を使うケアは、落ち着いた・会話が増えたという研究報告がある一方、物忘れが治るわけではなく、合う人と合わない人がいます。本人の人生に合う形を選び、本物の赤ちゃんとは言わず、嫌がったらすぐに下げることが大切です。
まずは家族に本人の子育てや飼っていた動物の話を聞き、一つ試してみましょう。
株式会社RONECTでは、AIによる完成イメージ画像の作成から国内への納品まで、日本人の担当者が施設のオリジナルぬいぐるみ制作をサポートしています。お気軽にご相談ください。
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この記事の出典
- 厚生労働省掲載「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」(2025年)
- Henderson E ほか(2024年)Nursing Reports 14(4)
- Moyle W ほか(2017年)JAMDA 18(9)
- Martín-García A ほか(2022年)Healthcare 10(3)
- Peng Y ほか(2024年)Geriatric Nursing 55
- Qiu Y ほか(2026年)Annals Academy of Medicine Singapore
- 市政貴惠ほか(2009年)日本看護研究学会雑誌 32(3)(学会抄録)
- James IA ほか(2006年)International Journal of Geriatric Psychiatry
- Santagata F ほか(2021年)BMC Geriatrics 21
- Cui Z ほか(2026年)Frontiers in Public Health 14
- Mitchell G ほか(2016年)Dementia 15
- Moyle W ほか(2019年)Aging & Mental Health 23(10)
- e-Gov「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」
- 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
- 消費者庁「高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう!」(2019年9月11日・高槻市掲載)
- 土浦市「本人・家族ミーティング」(認知症マフ)
- 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版」
- 厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況」
- 京田辺市「認知症施策に対するキャッチフレーズとオリジナルキャラクターについて」(2021年)
- いわき市「認知症サポーターがいる団体等にロバ隊長ぬいぐるみを交付しています」
- 知能システム(パロの製造元)
- 東京都立大学・産業技術総合研究所ほかの共同発表資料(2026年3月27日)








